フラッシュバック。

6/34
前へ
/34ページ
次へ
   言い返すと、親父はまじまじと俺の顔を眺めてから、「それもそうだ」と軽く肩を揺らすだけの笑いを漏らす。  ゆるやかな部屋の空気に、ほっと息を漏らす。  家の中の、安心感そのもののようなこの空気感は、親父と母ちゃんが長い時間をかけて作り上げたものなのだろう。  それに安心する俺は、やはり二人の間に生まれたガキなんだな、と思う。  そんなことを考えるようになったのは、やっぱり芽衣と出会ったからだな、と心の隅っこで気付いた。 「……あのさ」 「うん」 「俺、再婚したけど」 「ああ」 「先に謝っておく。孫の顔が見たいとか、そういうのは期待しないでくれ」  一気にそう言い切ってしまうと、親父の目が軽く見開かれたのが見えた。 「……悪いけど」  親父はしばらく俺の顔を見てから、のろのろと視線を何も映っていないテレビの方へと動かす。 「それは、あれか? お前か、彼女が子どもが嫌いだとか、そういう話か?」 「いや」 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加