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なんと話せばよいものかと、乾いていく口の中を軽く噛んだ。
「好きも嫌いも、特にないよ。芽衣からもそんな話は聞いたことない」
「経済的な理由か」
「いや、それも違う」
「……。まあ、今は自由な世の中だから、そういう夫婦がいてもいいとは思うが……」
「いや、違うんだ」
親父の口から、おためごかしのような決まり文句が出てくるのがいたたまれないと思った。
最後まで言わせなかったことに若干不快感を覚えたらしく、親父の顔が少し険しくなる。
「もっと、根本的で原始的な理由だよ。俺、種がないらしい」
「……」
「梓とも、それで別れた。ガキが欲しかったわけじゃないけど、子どもナシで何十年も一緒にいる相手じゃないって、お互い気付いちまったから」
「……そうだったのか」
親父の眉間の皺が、ぐっと深くなる。
「そうか。そうか」と何度も小さく繰り返し、やがてそのつぶやきは深い溜め息に変わった。
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