92人が本棚に入れています
本棚に追加
それなのに、黒いTシャツに真新しいデニム。
確かに、23くらいの頃、プライベートではよくこんなの着てた気がするが。
じっとりと滲んでくる汗が気持ち悪い。
久しく真夏の空気なんぞ忘れていたせいで、なんか、耐えられそうにない。
「ちょっとちょっと」
上から声が落ちてきた。
どう見ても昔の芽衣じゃないかという少女は、訝しげに俺を見下ろしている。
「大丈夫そうなら、あたし、もう行きたいんだけど」
わずかに苛立つその雰囲気は、俺の知る芽衣とは似ても似つかない。必死で思考を回す。
.
最初のコメントを投稿しよう!