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彼女はそれを普通に受け流すと、好奇心を隠さないグリグリとした目で俺の顔を覗き込む。
「アンタの名前は」
「え?」
「人に訊いておいて、自分は名乗らないのかよ。親にどんな育てられ方したんだよ」
どこまでも偉そうで、思わず苦笑する。
ここに転がってたのが俺じゃなかったら、えらい目に遭うところだぞ。
ふと、いつかの芽衣の言葉を思い出す。
“何度訊いても、名前教えてくれなかった”
──まさか。
まさかとは思うが、おい。一応、おい。
まさか、この状況がそれだとか言わないよな。
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