1128人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
化粧室に立ち寄った後、エレベーターで下に降りる。
ビルの外に一歩踏み出ると
むんっとした圧迫感を感じた。
蒸し暑い。
街路樹の木陰に立ち、
携帯のメールを開くと和也さんから
“18時30分くらいにそっちに行ける”とある。
あたしは
“地下鉄④番出口のポスト付近にいるね”
と返信した。
待ってる間、駅地下の本屋で立ち読みでもしようっと。
そんなことを思いながら
大通りに出て歩いていくと、
「――七海、」
自分の名前を呼ぶ男性の声をキャッチして、ギクリとした。
どうしよう。
いや、大丈夫。
この声の遠さなら“聞こえませんでした”と言っても
許される範疇だ。
瞬時に頭の中の電卓をたたいたあたしは、
歩みを止めるどころか逆に早足に速度を変えた。
最初のコメントを投稿しよう!