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「何を考えているのですか!」 帰りが遅いと思ったら、崖から落ちていたらしい。 ちょっとした崖じゃなく、がっつりとした崖。 腕が折れて、足がなくなって、車椅子に乗せられて、まるでモノのように運ばれてきた。 「……あはは。申し訳ない」 その態度が気に食わない。 その笑顔が気に食わない。 「いやでも、ほら。貴重な紫羽を、ね」 蝶々が気に食わない。 ミルク80パーセントの自称コーヒーが気に食わない。 「貴方様は」 全部全部、全部全部何もかもが気に食わない。 「貴方様は、先代様が繋いだ命を何だと思っているのですか!あの日、貴方様を助ける為にあの方は自らの命を投げ捨て……そうまでして守ろうとしたモノを」 「何故あの時貴方様を助けたのか。貴方様が助かった意味が、先代様が死に貴方様が生き残った意味がいつか分かると信じていました」 「なのに貴方様は、虫取りとホットミルクとご飯の事ばかり」 「どうして」 「どうしてこんな人を生かす為に、あの方が死ななければならなかったのですか」 とうとう言ってしまった。 止まらなかった。 主人へのこんな暴言が許される訳がない。 世界の前に、私は、おしまい。
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