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遡ること数時間前。
銀髪の青年ーージェイクは村に建てられた見張り台の上で、完全に暇を持て余していた。
時刻は僅かに昼を過ぎたばかり。
彼の見張り番の役目はまだ始まったばかりであり、春のうららかな陽気は余計に彼の退屈さに拍車をかけている。
この見張り番の役目は、『魔物の草原』が近くにあるこの村にとって、大変重要な物だとは頭では理解している。
しかしながら、生まれてこのかた魔物のまの字も見たことの無いような生活を送っていれば、気も抜けるというものだ。
友人のアーサーのように村の護衛部隊に所属していればまだ魔物と接する機会があるのかもしれないが、残念ながらジェイクがそこに入るには、わずかに年齢が足りていない。
『魔物の草原』というのは、その名の通り魔物が数多く住む草原。
一体あたりは強くないらしいが、いかんせん数が多いため万一攻めてきたらこんな村などひとたまりもない。
そのため、村の先人たちはその草原を厚い石垣で囲うことで克服した。
もっともそんな危険な草原の近くに村を作ること自体おかしい気もするが、それだけ切迫していたということであろう。
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