桐谷side

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ハッと我に返り彼女の肌の上を這っていた指を離した 同時にその名前の人物に例えようのない嫉妬心を抱き、俺の中のどす黒い醜い感情が渦を巻く 彼女に『ゆう』と呼ばれている男、 彼女に愛されている男、 彼女が全部をさらけ出せる男、 彼女の全部を知ってる男、 彼女に唯一触れてもいい男、 彼女が唯一男として見ている男、 俺が何一つ手に入れられなかった彼女の全てを手に入れた男…… 彼女が今呼んだのはそいつの名前 あんな声で呼んでいるのか? こんな姿で甘えるようにあいつの名を呼んで、触れ合っているのか? もう心と身体が引き千切れそうだ… 俺がこんなに君が好きな事、君はこれっぽっちも知らないだろうね 片思いがこんなに辛くて苦しいものだという事もこの歳で初めて知った 俺は君に出会ってから初めて知った事がたくさんある いっそ打ち明けて玉砕してしまえば今より楽になれるのだろうか…? でも今はまだ言わないよ だって俺は君を諦めるつもりはない いつか必ず俺のものにする その為ならどんな事もする 策士にだってなる いつか君が俺の隣で笑っていてくれる日がくるまで、絶対に君を逃がさない だから覚悟していてね……… 俺は深呼吸して心を落ち着かせ、本来やるべきことの着替えを素早く済ませ、彼女のそばを離れた
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