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殴って、しまった。
瞬時に『体罰』、『教育委員会』、『わずらわしいPTA』といった単語が脳内をかけめぐったが、あとの祭り。
それに俺がこいつらに何かしらを教える事は、もう叶わない。
「お前みたいなヤツがいるから……お前みたいな……」
同じ言葉を繰り返す事しか出来ず、握りしめた拳は感情を抑えようとしても震え、情けなさが込み上げた。
「くだらない、全てが馬鹿らしい」
唇の端と端を親指と人差し指で押さえながら、中島啓太は告げる。
まるで何かに取り憑かれたように、再び俺の手は挙がる。しかし、もう一度中島の頬を叩く事はなかった。
『じゃあ、アンタに何が出来る?』
中島の目は俺を責めているようで、逃げるみたいに進路指導室を後にした。
わかっている……わかって、いたんだ……でも、俺には………。
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