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( …この男はタカサトの国の…)
獣のような目に見覚えがあった。
ハッとし、その下に横たわる男の顔を見た。
あられもない姿。
気を失っているように見えた。
確信し、一気に体温が上がる。
「なにをしている…」
思わず腰に差していた剣をスラリと抜いた。
「……」
タカサトもそれを見、静かに立ち上がる。
同じように剣を抜く。
「 …ヤマセか…」
「……」
「どこかの噂でユキを探してると聞いた…」
「……」
「どこで見染めたか知んねえが」
タカサトがヤマセを見据えた。
「 …譲るわけにはいかねえ」
「……」
タカサトが先に剣を振った。
それをヤマセが受けて立ち、双方の刃の接点から火の粉が散った。
交錯した剣の間から相手を見る。
一人は鬼歯を剥き、一人は口を真一文字にきつく閉じる。
互いの力に剣を持つ手が震えた。
跳ね飛ばし、また刃を合わせる。
その金属音に、城の家来たちが気付いた。
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