0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あわっ、あわわわわ!」
慌てて後ろに下がる雅。だが、明に手を握られたことによって、それ以上下がることは出来なかった。
「どうしたんだ、雅?」
「いやっ、なんか…」
「もしかして急にキスされたから怒っているのか?」
「怒ってなんかないよ。逆に嬉しいし」
「なら、なんで…」
「それは、えっと…」
上手く返そうと思っても、考えが思いつかない雅。
なぜなら明にキスをされた時から抑えようもない早さの鼓動が襲いかかっているからだ。
この鼓動を明に聴かれてしまう前に抑えたいが、もし聴かれてしまったらと思ってしまうと、それがまた雅の鼓動を早くする。
「どうしたんだ、雅?やっぱり急にキスされたから…」
俯く雅を心配する明。
「ちっ、違うんだよ!確かにいきなりキスされたから、びっ、ビックリしたけど…」
焦りながらも明の心配を取り除こうとする雅。
「そうだよな。やっぱり急にキスしたのは嫌だったよな」
「そっ、そんな!嫌とかそういうんじゃ…」
「ごめんな、雅。俺、今日は1人で帰るよ」
そう謝って握っていた手を離す明。
「明くん…待って」
明が遠ざかろうとしている。
でも、この胸の鼓動を明に聴かれたら。
そんな想いが明を引き止めようとしたい雅の心を迷わす。
勇気を出して溜めていた想いを明へと晒けだし、明もその想いに応えてくれた。
数年間の想いが今日、叶おうとしている。
だが、明は行ってしまう。
昨日まで2人で歩いた帰り道を、1人で歩いて…。
「雅?」
雅は明の手を握ってた。もう離すまいという程に強く。
「もう、聴かれたっていい」
小さく呟く雅。
雅の心は吹っ切れた。そして明に応えるべく、行動でそれを示した。
雅は明の唇に優しくキスをした。
「さっきのお返し」
キスをされた明の顔は、先程までの雅のように真っ赤だ。
その姿を見て雅は子供心に「へへっ」と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!