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放課後、静かに落ちていく夕日が差す図書室の隅で男は1人本を読んでいた。
そんな読みふけっている男にの背後には何者かが近付いていた。その者は音をたてず、図書委員にも人差し指で何も言わないよう示した。
そして、その努力のかいもあってかその者は男に気付かれることなく、近づけた。
よほど集中しているのか、それともその者の努力が生み出したのか男は一度も振り向かず、周りを見渡すことすらなかった。
この図書委員と男とその者の3人しかいない図書室を。
その者はすーっ、と鼻から息を吸い、それを止め、腕を構えた。
まるで魚屋に無防備に置かれたイワシを狙う虎猫のように。
どこかの歌ではお魚咥えた虎猫は追いかけられていたが、ここはヒト対ヒト。大きさのハンディなど存在しない。だから逃げるなんて野暮なマネはせずに、ここで喰らう。
そう、く・ら・う♥
「いただきま~す♥」
その者は男に襲いかかった。
制服の中のYシャツに手を潜ませ、男の胸板を掴む。
「アツ~い♥アツいわぁ~」
その者は男の胸板を触る度に興奮し、桃色の汗がその者の身体に流れ込む。
「アツい!アツい!アツ~~うぃ♥」
その者の気持ちは絶頂にも近しいものになり、素晴らしいものを求める“愛の探究心”が燃え盛り胸板から下へ移動しようとした。
『はぁっ、はぁぁ、はぁ~。秘密の楽園へ~!!エデンへ~!“アキアキ”のエデンへ~!!!!」
真っ赤に燃えたぎるその者の瞳は、一瞬にして一言にして一発にして消火された。
「どこ触ってんだよ!!」と男の一言と投げつけられた本によって。
「いった~い。何すんのよ、アキアキ」
その者の顔面に本がクリティカルヒットしたが、幸いにも顔が一時へこむだけで済んだ。これなら低反発の枕のようにすぐに戻る。
「いった~いじゃねぇ!いきなり俺の体を散々いじくりまわしやがって!!それと、俺はアキアキなんかじゃねぇ!!阿久津明(あくつ あき)だぁ!!」
「も~うアキアキったら、ツ・ン・デ・レ♥」
明の頬を人差し指でつつく。
「きゃ~、プニプニ~♥」
「おい、やめろ」
「きゃ~、プリプリ~♥」
「だから、やめろって…」
「きゃ~、ぷよぷ―――」
「やめろって言ってんだろぉ!!」
明のその言葉と同時に、どこからともなく明の手元に握られたハリセンが頭上に落っこちた。
「―――よぉぉぉう!!!!」
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