ほーかご

4/14
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「知らないにきまってんだろ」 明の感情は怒りを通り越して呆れ果てている。 「まったく、嘘なんかついちゃって~。私はアキアキ好みに調教されてきたんだからね♥」 そう言いながら、人差し指で明の頬をクルクル回し、「もう、こんなこと言わせないでよぉ♥」と照れ隠しを装っている。 「お前が勝手に言ってんだろ、灰谷雅(はいたに みやび)。」 「きゃ~♥アキアキったら私のことをフルネームぅ~。で・も・。私のことはミヤちゃんでいいよ」 「やっ…灰谷、やめろ」 何も気にせず抱きついてくる雅に、明は1人の女性として意識してしまい、顔がほんのりと赤くなる。 「2人は仲良くていいわね」 そんな光景を智花はカウンターで微笑ましく眺めている。 「なっ、仲良くないですよ!灰谷とはただの幼なじみってだけで、俺は迷惑してるんですよ」 「あら、そんなこと言ったら雅ちゃんに怒られるわよ」 「怒らないですよ」 明のその言葉に同意するかのように雅は「そーよ、智花」と言ってきた。 「だって、これはアキアキの愛情のう・ら・が・え・し♥本当は私のこと大好きなんだからぁ♥」 「んなわけないだろ!俺はお前のことなんて大嫌いだ。今だってせっかくここで集中して勉強してたのに邪魔しやがって」 机の上にあるノート類を叩き、勉強することを訴える明。 「いいじゃない、別に。だって、テストがあるわけじゃないんだよ?」 「テストがなくたって勉強はするもんなんだ!ほら、見てみろ!」 ノートを一冊掴み、雅の目の前で広げる明。 「ななな、何これ~」 「今日授業で習ったところだ。どうだ、わかるか?」 「わかるわけないよ~?」 視界を覆うノートに雅は目眩を覚える。 「そうさ。俺だってそうなんだ。授業で習ったって、先生が説明した全てを理解したわけじゃない。だから俺は、図書室のような静かな場所で復習をしてるんだ。わかったか?」 「う~~~、わかったよぉ」 雅は既に明の隣の椅子に座っていた。 「じゃあ、早く終わらせてぇ」 「わかったよ」 机に突っ伏す雅に微笑むと、明は手にシャーペンを持った。 「ねぇ、阿久津くん。雅ちゃん大丈夫?」 さっきまで元気だった雅が急激に元気をなくしたことを心配になった智花が問いかける。 その問いかけに明は笑いながら応える。 「あぁ、いつものことですよ。灰谷、ノート嫌いなんですよ」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!