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「ノート嫌い?」
「はい。まぁ、簡単に言えば勉強嫌いなんだと思います。灰谷はノートにびっしり書かれた文字を見ると目眩が起こるそうなんですよ」
「じゃあ、雅ちゃんを保健室に連れて行かないといけないわね」
智花はカウンターから動こうとした。だが、明の「大丈夫です」の一言でカウンターに座した。
「大丈夫です。目眩といってもそんな重症っていう訳じゃないんで。ここにいれば俺が今日の復習を終えるころには復活してるでしょ。そうだよな、灰谷?」
「そうだよ~。心配ナッシングーだよ、智花ちゃん」
机に突っ伏しながらも智花に元気アピールをする雅。
「なら、よかったわ。知らなかったわ、雅ちゃんがそんな症状をもってるなんて。授業とか大丈夫なの?」
「それも心配ナッシングーだよ~。私にはこの優れた頭脳があるからねぇ~」
人差し指で自分の頭をコツコツとする雅。
「えっ?雅ちゃんって頭いいの?」
「そうだよ~。よくぞ訊いてくれたね、智花ちゃん。でも、今の私には話せそうにないからアキアキ後はよろしくぅ~」
そう言って明の肩を叩く雅。
「わかったよ。でいうか、俺をアキアキと呼ぶな…って、聞こえてないか」
明の言葉が届く前に、雅は寝息をたてていた。
「さっき灰谷が言っていましたが、灰谷には優れた頭脳があります。それは授業中にノートがいらなくなるもの。瞬間記憶能力です」
「瞬間記憶能力?」
「はい。瞬間記憶能力は、一度見たものは忘れないというものです」
「なるほど。確かに瞬間記憶能力があればノートなんていらないわね」
「ノートを使っているのは黒板に書かれた事を覚えきれないからですからね」
「じゃあ、テストは安心ね。あっ、でも数学みたいな自分で考える問題は難しいわね」
智花のその言葉を聞いた明はゾッとした顔になった。
「どうしたの、阿久津くん?顔色悪いわよ?」
「いえ…なんか雅のテストの事を考えたら。それこそ目眩もしそうで」
「えっ?テストの事で雅ちゃんに苦労はしないんじゃ?」
「灰谷のテストについては苦労しますよ。だって、瞬間記憶能力なんていう凄い能力持っていながら肝心の授業中は今みたいに寝ていますからね」
そう言いながら、隣で眠っている雅に視線を送る明。
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