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「なので、いつもテスト前になると俺がノートに書かれたのをホワイトボードに写して教えてます」
話しながらその時のことを思い出した明は、溜め息をはく。
「それに、俺が真剣に教えている最中でも灰谷は平気で寝ますし」
「それは大変ね」
「はい、なかなか起きないので。でも、まぁ俺にとっても勉強になるのでそんな苦じゃないです。慣れちゃったんですかね?」
「そうね、そうかもしれないわ。2人は幼なじみだものね」
ニッコリと笑う智花。
それに目を奪われた明の頬はほんのりと赤くなったが、それを智花に気付かれまいと急いでノートに戻した。
「はっ、はい。俺の家の隣に灰谷の家があるので」
「それでどうなの?」
まだ笑顔のままだろう、智花の声は何か恥ずかしがっているようなものだった。
その言葉の真意を知らない明は「えっ?」とまるで掴めていないようだ。
「何がですか?」
「雅ちゃんのことよ。雅ちゃんは阿久津が好きみたいだけど、阿久津くんは雅ちゃんのことどう思ってるの?」
「どっ、どうと言われましても灰谷が言っている好きは恋愛感情から来るものではないかと思います。そっ、そそそれに俺には好きな人が…」
「えっ、そうなの?私が知ってる子?」
智花の問いかけに小さな声で「…はい」と答える明。
「誰?名前教えて?」
「それは言えません。ただ、俺は灰谷に恋愛感情はありませんし、灰谷も俺に恋愛感情はないことだけ言っておきます」
「そう」
さっきまでの恋愛話に反応して人が変わったようにグイグイと質問していた智花だったが、話が広がらないと思い諦め、いつも通りのおしとやかな智花に戻った。
「でも、阿久津くんが雅ちゃんに言われている好きは友達に向ける好きじゃないと思うわ」
「そんなバカな。灰谷が俺に恋愛感情を持っていると?」
「ええ」
「そんなわけないですよ。だって、俺だって灰谷に恋愛感情を抱いたこと“一度も”ないんですから」
智花が明の言った言葉を復唱する。
「“一度も”ね」
智花のその言葉に明は平然として「はい」と返事をする。
「じゃあ、なんで雅ちゃんのことを名字で呼ぶの?」
「それはお互い高校生にもなると周りからの視線が気になりますから」
「それは阿久津くんの事情よね?雅ちゃんは、阿久津くんのことをアダ名で呼んでるのだから」
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