5人が本棚に入れています
本棚に追加
「死ぬ前に、言い残すことはあるか?」
瀕死の男にジョニーは語りかけた。
「……あと、少しだった。……この……世界から抜け出せるはずだった」
血が凝固したのだろう。口を動かそうとすると周りの髭がパリパリと音を立てた。
「どなたか知らないが、……煙草をもってないか?」
ヒューヒューと風の抜けるような不規則な呼吸をしながら、男は三年前に止めた煙草を最後に吸いたいと懇願した。
漆黒の羽を一枚むしると、フッと息を吹きかける。羽根の先端がチリチリと燃え出し、火の付いた煙草へと姿を変えた。ジョニーはそれを男に差し出すと、男の顔を間近で見た。
透き通った目をしていて、とても悪事を働くような人間の目ではなかった。それでも自分に仕事がきたということは、何か理由があるのかもしれない。そう考え、男の記憶を少し覗いてみることにした。
***
最初のコメントを投稿しよう!