ジョニー篇

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「死ぬ前に、言い残すことはあるか?」  瀕死の男にジョニーは語りかけた。 「……あと、少しだった。……この……世界から抜け出せるはずだった」    血が凝固したのだろう。口を動かそうとすると周りの髭がパリパリと音を立てた。 「どなたか知らないが、……煙草をもってないか?」  ヒューヒューと風の抜けるような不規則な呼吸をしながら、男は三年前に止めた煙草を最後に吸いたいと懇願した。  漆黒の羽を一枚むしると、フッと息を吹きかける。羽根の先端がチリチリと燃え出し、火の付いた煙草へと姿を変えた。ジョニーはそれを男に差し出すと、男の顔を間近で見た。  透き通った目をしていて、とても悪事を働くような人間の目ではなかった。それでも自分に仕事がきたということは、何か理由があるのかもしれない。そう考え、男の記憶を少し覗いてみることにした。  ***
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