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「あまり、近づかないで貰えるか? 臭くて鼻が曲がりそうだ」
「なにぃ!?」
「おっと、失礼。腐っているのは頭だけじゃなく、耳もか?」
「てめぇ……」
顔を真っ赤にした黒服は引き金にかけた指に力を込める。
25口径が火を吹くその瞬間をハザマは見逃さなかった。瞬時に上半身を後ろに反らせ、眉間のあった所には煙草の先端。
何事もなかったかかのようにぷかりと煙草を肺に入れると、「火、ありがとよ」という言葉と煙を黒服の顔に吐いた。
「ぶっ殺す」
頭に血がのぼった黒服の足がハザマの脇腹にはいる。鈍い音とともにハザマの体はくの字に曲がった。たまらずに黒服との間合いをとるが、そこは25口径には絶好の距離だった。乾いた銃声とほほ同時に襲いかかる鉛弾がハザマの体をかすめた。
後方から瓦礫を踏みつける音が聞こえて振り返ると、銃声を聞きつけた黒服が三人。それぞれが刀身の長い刃物を手に握り締めていた。
「お終いだな」
銃を持った黒服が笑みを浮かべる。
流石に四人を相手に丸腰では分が悪いと判断したハザマは、足元に転がっていた鉄パイプを拾い上げた。そして煙草をぷかりと吸うと左手の指に挟んだ。
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