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その日私は珍しく、携帯の目覚ましより早く目を覚ました。
夏休みに入り毎日をだらだらと過ごしていたわけだが、当然登校用にセットしている携帯の目覚ましは切らずにいた。
いざ学校が始まった時に起きられなくなってしまうからだ。
さて、今は何時なのだろう?
枕元の携帯を開く。
「--あれ?」
……電源が落ちている。
ハッとして置き時計を見ると、美鈴との約束の時間、午前11時30分を10分程回っている。
急いでリビングに降りると、由美がいた。
「ちょっとちょっと! 何で起こしてくんないのよ」
ソファーに座った由美は嫌味なほどに落ち着いており、テレビをつけたままお気に入りの小説を読んでいた。二階からバタバタと降りてきた私を横目でチラ見すると、また小説に目を戻して口を開いた。
「何でって、別に頼まれてなかったし。お姉ちゃんいつも一人で起きてくるじゃん。いつもの携帯目覚ましは?」
「電源落ちてた。で、不思議なのが、電源そっからつけたんだけど、電池残量80%だったの」
「壊れてんじゃない?」
由美は冷たく即答した。妹のくせに可愛げのないやつだ。
小さい頃は一緒にままごとをやったり近所の公園に遊びに行ったりしていたが、最近は家での会話すら少なくなっている始末。
会話の疎遠になっている夫婦をネタにしたニュースを今しがたテレビでやってるのを指摘したかったが、それが私と、今まさに目の前にいる由美との問題なこともあって黙っておくことにした。
いや、まあその事を気にしているのはもしかしたら私だけであって、由美は全く気にもかけていないのかもしれないわけだが。
これが美鈴だったらきっと笑ってくれるのだろうと、心の中で「私が美鈴にこの話題を振って、それを美鈴が笑いながらバカにして--」というような一連の流れを想像すると、それだけで可笑しくなって笑いそうになった。
由美はその言葉を最後にソファーから立ち上がると、今度は本棚から白い卒業アルバムを引っ張り出してきた。
昔見せてもらったことのあるお母さんの高校の卒業アルバムだ。
そしてまたソファーに、静かに座るとアルバムを広げ、“ある”ページを開いた。
「お姉ちゃん、これ」
「ん? 何々?」
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