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由美が見せてきたページは、クラスごとに顔写真と一言コメントが載っているページ。お母さんは旧姓の「田中冬美」で載っていた。気になる一言コメントは--
「二人の事は忘れない。ありがとう。--だって」
私が見ていたところを察してか否かは分からないが、ちょうど読んでいたところを由美が声に出してみせた。
「どういう意味だろうね。これ。……お姉ちゃん、何か知ってるんじゃないの?」
由美は、まるで私がその事を間違いなく知ってるかのような口振りで聞いてきた。突然アルバムを引っ張り出して、どのページにも目もくれずこのページを見せてくる辺りをみても、私に“そういう確信”を持っての行動なのだろうか。
「え? どうして?」
「昨日お母さんにそれらしい事聞いてたじゃない。お母さんの昔の友達の誰かが死んじゃうとか死なないとか。……あれ? 何か違ったかな?」
「私が? そんな事聞いたかな?」
……全く身に覚えのない事に納得はいかなかったが、由美が単刀直入で聞いてきた理由が分かったので、そこには納得した。
まあ元より、口で勝てる相手では無いのでそそくさとリビングを後にした。
昔からそうだ。由美は絶対に怒らないが、冷静に痛いところをついてくる。
ついこの前の、珍しく口答えをしない由美に一方的に怒っていたら、私がお母さんに怒鳴られてしまったのを除くと、今のところ勝率はゼロだ。
あれは、私の勝ちだった……はず。
にしても、昨日私がお母さんに聞いてたって、何時頃だろう?夜お母さんに聞いてみよう。
急いで着替えて顔を洗って髪を解いてポニーに纏めると、由美に行ってきますを言うためにリビングへ戻った。
由美は、今度はお母さんの小さい頃のアルバムを眺めて「なるほどねー。だからあのコメントか」と一人でぶつぶつと呟いていた。
一言コメントの真相も気になったが、今は美鈴のご機嫌の方が気になる。
絶対怒っている。
いや、「絶対!」怒っている。
玄関を出ると、目を開けてられないくらいの光を放つ太陽と、8月とは思えない程の涼しい風に歓迎された。
空も高い。
うん、今日は何か良いことありそう!
「行ってきまーす!」
気分が良かったので大声で言うと、丁度道向かいに住んでる同級生の砥用(ともち)美里が家から出てきた。
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