3人が本棚に入れています
本棚に追加
遠くにうどん屋が見えてきた。その脇で腕組をした美鈴も。
そして、うどん屋に着くなり美鈴に一喝された。
「ちょっと何やってたのよ! あんた携帯も壊れてるから連絡もつかないし!」
ほら、やっぱり怒ってた。
美鈴は今年の4月から編入してきた子だ。
ベリーショートと右目の泣きボクロが彼女の可愛さの武器と言える。
ご両親の事情で、今はアパートを借りて一人で暮らしているらしい。
うちのクラスに入って早々、席は離れていたのに私に喋りかけてきた。転入生はまず、前後左右の人と仲良くなるのがセオリーだと思うのだが。
まあ、そんな彼女の気さくな性格のお陰で仲良くなれたのだが。
私は美鈴の事が大好きだ。何故かは分からないが、この気さくなところや、天真爛漫なところにひかれているのかもしれない。
「え? やっぱり壊れてるの? てか何で知ってるの?」
「あんた昨日自分で言ってたじゃない。しかもあんな夜中にどんどんドア叩いて」
「え? 私が?」
「そうよ。携帯壊れてたからドア叩いたって、そう言ってたじゃない。まあいいけど。あ、石は絶対に返してよ。あれお母さんに貰った大切な石なんだから」
「……え? 石?」
……。
…………。
ちょっと待ってー! さっきから“石”って何なのよー!
「ちょっと、あんた石借りた事も忘れたなんて言い出すんじゃないでしょうね」
やばい。これは「怒り」が「激怒」に変わる前兆だ。何とかしないと。
「あ、ああ! あれね。う、うん。返す返す! すぐに返すから、もうちょっと待ってて。……アハハ」
「……あんたねえ」
何とかその場をやり過ごす事に成功 (?) し、その日目的としていた私のネックレスを買いにショッピングへ出発した。
最初のコメントを投稿しよう!