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加藤純一、かつて現実の世界で名乗っていた名だ。
これからも、この名を名乗って生きていく。
夢で見た世界、あの世界へと辿り着くまでは
一、英雄の世界
僕は、永遠に終わりのないように思える石造りの階段を上がり、先にある扉を開けて、英雄の魂が生きる世界へと踏み込んだ。
世界の管理者、異世界を監視する者達が、偉業を成し遂げた英雄の魂を集め、保護する世界。
最初に、ここに入ったのは何時だったか、僕は覚えていないが、記憶の片隅に少しだけ残っている。
忌まわしい神と眷属が跋扈する世界で戦い抜いた男、エンリケと出会い、良くしてもらったのを思い出した。
その頃は、まだ僕は力がうまく扱えず、苦労していた時だった。現実へと戻るために、エンリケに協力してもらったのだ。
僕は、かすかな記憶を頼りにして、街を歩いた。僕の服装は白のTシャツにジーパンと、かなり浮いた服装だった。
それが、周りの人達の注目を集めてしまうのは仕方のない話で、白い洋風の甲冑を着た男達が、好奇心から声をかけてしまうのも、当然だったのかもしれない。
「君、新入り?」
白い洋風の甲冑を着た。少し、低身長の男、異様なまでに整った顔つきは、自分がいる世界が異世界なのだと実感する。金髪碧眼、物腰柔らかな笑み、声は優しげ、英雄というよりは、優男いった感じだ。
しかも、僕を新入りと勘違いしているようだった。まあ、正直に話せば色々とめんどくさいことに成りかねないので、勘違いさせておくに越したことはない。
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