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俺がこの店 “酒場『オニオン』”で働き始めたのは、ちょうど10年前。
あの時、8歳だった俺をこの店のマスターであるオニオンさんが拾ってくれた時から。
「エルク!カルラから聞いたぞ。派手にやっちまったって」
客も皆帰り、明日の準備をしていると、バタンと店のドアを開けて、長身の男が慌てた様子で入ってきた。
「オニオンさん!俺…………本当にすみません」
「怪我は?怪我したのか?」
「え?い、いえ。怪我はありません」
怪我は無かったと伝えると、途端にへにゃりと手近なイスに座り込むオニオンさん。
「ふーっ。よかったぁ」
「───っ」
オニオンさんも、カルラさんもいつもそうだ。
いっそ、何をしてくれたんだ、と叱って追い出してくれたらいいのに、と何度も思った。
何かあると、真っ先に俺を案じてくれる。
それが、堪らなく嬉しくて泣きそうになる。
あいつらは、今も命がけで戦ってるのに、俺だけ───
「オニオン。あんたエルクをなかさないでおくれよ」
え……?
何で、なみだ?
「なっ、エルクすまん。俺の顔が怖かったか?」
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