#01 魔術師…カーディナル…

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俺がこの店 “酒場『オニオン』”で働き始めたのは、ちょうど10年前。 あの時、8歳だった俺をこの店のマスターであるオニオンさんが拾ってくれた時から。 「エルク!カルラから聞いたぞ。派手にやっちまったって」 客も皆帰り、明日の準備をしていると、バタンと店のドアを開けて、長身の男が慌てた様子で入ってきた。 「オニオンさん!俺…………本当にすみません」 「怪我は?怪我したのか?」 「え?い、いえ。怪我はありません」 怪我は無かったと伝えると、途端にへにゃりと手近なイスに座り込むオニオンさん。 「ふーっ。よかったぁ」 「───っ」 オニオンさんも、カルラさんもいつもそうだ。 いっそ、何をしてくれたんだ、と叱って追い出してくれたらいいのに、と何度も思った。 何かあると、真っ先に俺を案じてくれる。 それが、堪らなく嬉しくて泣きそうになる。 あいつらは、今も命がけで戦ってるのに、俺だけ─── 「オニオン。あんたエルクをなかさないでおくれよ」 え……? 何で、なみだ? 「なっ、エルクすまん。俺の顔が怖かったか?」
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