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「靱ちゃん、腕怪我してたの?」
杉田先輩は恐る恐る俺の右腕を見つめると、心配そうにたずねてきた。
「あぁ、さっきの騒動でちょっとな。まぁ、別に慣れてるから大丈夫っすよ」
心配しなくていいと杉田先輩の頭を撫でると、杉田先輩は不思議そうに首を傾げて「慣れてる…って?」と問うてきた。
「あー…すいません。ちょっとそこは…」
別に隠すことでもねぇんだけどな。
まぁ、俺には産まれてきた時から中学生の時の記憶迄がねぇんだよ。
桐火は俺がちっちぇえ頃からの付き合いだっつってるけど、幾ら聞いても昔の話しはしてくんねぇんだ。
多分…いや、確実俺の記憶がない理由を知ってる筈なのに
なんも教えてくれねぇの。
何なんだろうな…
「靱ちゃん?大丈夫?」
「…!あ、すいません。ちょっと言えないんす」
杉田先輩は言葉の途中で黙り込んだ俺を心配そうに見つめていた。
俺が慌てて笑えば、何処か腑に落ちないみてぇな顔をするが「そっか。僕こそごめんね?」とこれ以上詮索することなく謝ってくれた。
「いや、杉田先輩は謝んねぇでいいんすよ!」
そりゃ、腕折ることに慣れてるなんて言われちゃ誰でも気になるだろうからな。
杉田先輩は当たり前の事をしただけ。
謝る必要なんて何処にもねぇだろ?
「あ、杉やん!僕達まだご飯の途中だよ?」
中田が突然思い出したように言い出した。
飯の途中で出てきたのかよ
「あ!そうだった!じゃあ僕達はこれで!…そうだ、放課後他の隊員達にも紹介しないといけないから教室で待っててね!」
それだけ言い残すと未だ桐火を刺してるアレキサンドリューを引っ張りながら去っていった。
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