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部屋に戻ると茶色の髪の原田さんと、ウチの隣の柴犬そっくりな永倉さんが、演劇部のおもちゃの刀で遊んでいた………
「福田!これじゃ不逞の輩は斬れんぞ」
原田さんが永倉さんに斬りつける。
「それは、演劇部の刀で本物は持ってません」
「えんげき?お前役者でもやってたのか?でも、これじゃな……刀買う金あるのか?」
原田さんの問いに沖田さんが答えた。
「いいんですよ。福田君は浪士組の医者なんですから、刀なんかなくて」
沖田総司が原田さんから刀を取り上げた。
「へいへい。総司専属のかわいいお医者様ですからね」
ふざける永倉さんを睨んで
「馬鹿なこと言ってないで、新入隊士の稽古へ行って下さい。土方さんはもう胴を付けてましたよ」
二人を追い出すと、沖田総司は真面目な顔で正面に座った。
思わず私も姿勢を正す。
「福田君。この風呂敷、君のだよね?」
人斬り現場で演劇部の救急箱と一緒に落ちてたものだ。
私のだろうって役人が勘違いして、一緒に持たせた。
「悪い。さっき蹴つまづいて、中身が出てきてしまって」
え?そんなこと?
「気にしないで下さい。ただの風呂敷包みですから」
そういえば何が入ってるんだろう?
包みを解くと、小判がジャラジャラ出てきた。
初めて見たけど、小判だ!
数えると二十二枚ある。
「まさかとは思うけど、福田君……」
沖田総司の優しい目が気のせいかキツくなったような……
「盗んでなんかいません!役人が間違って………」
「いい所のお嬢さんなの?」
え?
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