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「家出娘がここ追い出されて、仕事もなけりゃ行き着くとこはそこだろうさ。だから、近藤さんは自分の食い扶持にも困るのに、拾ってやったんだろ?あの人の悪い癖だが」
沖田総司はしばらく黙って
「……福田君。本当に行くとこないんだね?」
「………はい」
「ここにいたいんだね?」
そう聞かれると、困るんだけど、他に知ってる人いないし、なかなか夢も覚めないし………
黙っていると、沖田総司は納得いかない様子で部屋を出て行った。
沖田総司が出て行って、土方副長と二人……
何だか緊張するな……
外から竹刀の音が聞こえてくる。
相変わらず涼しい顔は何考えてるのか分からない。
「福田君」
「はっはい!」
土方副長は風呂敷包みを差し出して
「とりあえず総司と刀でも買ってこい」
えー?何で沖田総司と………?
私嫌われてるし、気まずいし
「そんな嫌な顔するな。あいつなりに心配してんだろ?」
「迷惑がられてるだけだと思いますけど」
「そりゃそうだろう。福田くんの救護班は総司の所の配属になったからな。世話係はあいつだ。近藤さんから聞いてなかったか?」
え?!聞いてないよ。そんなこと!
「お前すぐ顔に出るなぁ……そういうことだから、総司の下について働け。以上」
なんで?
こんなに迷惑がられてるのに!
「しかし、何だって、女だって知られたんだろうなぁ…」
夕べのことを思い出して、ぼっと頬が熱くなる。
土方副長が意味深にほくそ笑んだ。
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