愛刀銀ちゃん

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ああ…… 気が重い…… 何でよりにもよって刀買に行くの沖田総司なの! きっと断られるよ。 近藤局長なら良かったのにな。 文句言いながら、荷物の置いてある部屋の障子をあけると 「………わっ!沖田総司!!」 その人は、壁にもたれて座って刀をぬいていた。 「はい。福田睦月君……」 しまった!いると思わなかったから、びっくりして呼び捨てにしてしまった。 「土方副長が、沖田さんと刀買いに行けって……」 「いいよ」 そういって、刀を鞘に戻した。 「え?」 てっきり、嫌だって言うかと思ったのに、刀を差して藍の羽織を羽織る。 「俺も、京都にきたばかりで町のことよく知らないんだけど……行ってみるか」 歩くのが早い沖田さんの後を追って、玄関を出ると 「八木の主人に近くの刀屋聞いてくる」 と、母屋のほうに行ってしまった。 もう、怒ってないのかな? 「おい!福田。稽古サボってどこいくんだ?」 永倉さんと隊士が二人、剣道の防具をつけたまま門をくぐってきた。 「沖田さんと刀を買いに行くんです」 「そうか!男同士で逢引か!いいの選んでもらえ」 意地悪く笑った顔が、やっぱり隣の柴犬にそっくりなわけで…… 「あれ?永倉さん福田君が女だって知らないんだっけ?」 いつの間にか戻って来ていた沖田総司が、背後でつぶやいた。 「まあ、いいか。行くぞ」 いいのかな? 歩くのが早い沖田総司の後を追いかけた。
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