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馬越さんが私と井上さんの間を抜けて、救護室の障子を開けた。 ちらり井上さんを見て草履を脱いだ。 「…………全く、どういう育ち方をしたのか知りませんけど、俺は自分のかわりなどいくらでもいるなんて考えたことありませんよ。いなくなろうが死のうが、誰も悲しまないと思ってるんですか?」 ――私もそう思うよ 馬越さんも井上さんがいなくなると寂しいよね?うん。 「あんな美人の姉上が必死で連れ戻そうとしてるのに…………アホですか?あんたは。それとも、その考えも武士の心得とかいうやつですか?」 井上さんは顔を歪めて 「なぜ私などに心を砕くのか……疑問でなりません」 馬越さんはああっ!とイラついた声を上げて 「めんどくせえなぁ……井上さんは……そんな言葉で今までどれだけ周りを傷つけてきたか、気付いてもいないんでしょうね」 乱暴に障子を閉めた。 ちょっと、それは言い過ぎではないのかと思ったけれど…… 井上さんは黙って救護室を離れて行った。 「井上さん!待って!!」 どうしよう!馬越さんの言葉に怒ったのかな? 井上さんの前に走り込んで腕を掴んだ。 「姉の所へ行かなければ……」 怒っているというより正気のない顔でぼんやり薄曇りの空を見上げた。 「あのね井上さん!私は井上さんがいないと寂しいし、きっと馬越さんだって寂しいからあんなこと言ったんだと思うよ!井上さんに分かって欲しいから!」 「……分かって欲しい?」 もう!何でわかんないのかな!! ちょっとむかつきながら井上さんのお腹に思わずハグした。
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