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救護室の前を、入ろうかどうしようかうろうろしていた。
どうしよう……
何だか泣きそうだ。
胸が痛いし、いらいらするし、頭もボーっとするし……
ためいきついて救護室の前で立ち止まる。
障子が開いて、いつもの不機嫌な馬越さんが見下ろしていた。
「なにさぼっているのですか?これ、福田さんがいなかった時の治療費の覚書……」
帳面を差し出した馬越さんの顔が滲んで揺らいだ。
「……はい。確認して会計の人に見せてきます……」
しまった。
今涙がこぼれた。
男のくせに何泣いてんだって気持ち悪がられるよ。
馬越さんに気付かれないようにうつむいて帳面を受け取る。
あれ?引っ張っても取れないんですけど…………
顔を上げると、かわいい目がゆっくり瞬きした。
それから「ちっ」と舌打ちする。
急に帳面を放されて後ろに尻もちついた。
「……気持ち悪い……」
ああ……やっぱりそう思うよね……
「すみません」
立ち上がっておしりをはたいた。
「俺が気持ち悪い……」
「え?あ!さっき吉川先生の所で吐いたから気持ち悪いんですね。胃腸に効く漢方薬聞いてきます!」
何か顔も赤くて熱もあるんじゃないかな?
頭を押さえて救護室に戻っていく馬越さんのために、もう一度吉川先生の家へ全速力で駆けて行った。
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