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「危ねぇな!」
吉川先生の家の角で、飛脚にぶつかりそうになった。
「すみません!」
交差点では一時停止。
――――中間テストがあるのに……
「夢で勉強できるのって、幕末だけじゃん」
ぼんやりする頭を振って、吉川先生の扉に手をかけた。
正太君は奥の部屋で休んでいて、今のところは大丈夫だとお光さんが教えてくれた。
その夜、久し振りの救護室の布団に一人くるまる。
沖田さんは出掛けて留守。
今日は正太君の治療を目の当たりにして、怖くて何もできなかった。
井上さんには困らせるようなことをしてしまうし……
「……テスト勉強……」
これは絶望的だ。
あっちでもピンチ。
夢でも何にも出来ない。
「何か頑張らないと!」
そんなことを考えていていたらあんまり眠れなかった。
「馬越さん!昨日は何にも出来なかったけれど、やっぱり応急措置くらいは出来るようになりたいんです!」
いつものように足りない薬を確認して帳簿をつけていた馬越さんは、こちらも見ずに
「医者にでも修行にいきますか?」
相変わらずの無愛想……
「行きたいです!ちゃんと勉強したいんです!やっぱり浪士組には、刀傷の手当てくらい出来る方がいいと思うんです!傷を縫ったりとか、止血が出来るとか……聞いてます?」
「……そうですね……」
昨日から馬越さんは気のせいかぼんやりしている気がする。
朝稽古でもしこたま沖田さんに打ち込まれていたし、朝餉だってあんまり食べていなかった。
まだ胃腸の具合が悪いのだろうか。
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