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近藤局長付なんだけど、今朝八木邸を訪ねた時もいなかったし、前川邸の大部屋を覗いてもいなかった。
いつも気配なく現れてびっくりするんだけど……
八木邸の厨を覗いても誰もいない。
「何しとるんや?」
声に振り返ると、芹沢局長と一緒にいる隊士がお金の音をさせて厨に入ってきた。
昨日酒はないかって取りに来た人だ。
「あの女おらんのか……お前どこに酒があるか知っとるか?」
「知りません。昨日、もうないって言われませんでした?」
「酒くらい置いとけや……お前買うてこい」
顎でしゃくって、隊士は瓶に座った。
「……はい。店の場所はどこですか?」
「そんなことも知らんのか!ちょい走っていけば店ぐらいあるやろ」
ちょい走るってどのくらいよ……?
「何本買ってきたらいいんですか?」
「お前が担げるだけや」
なんか適当でいいのかな?
「早よ行け」
「お金は?」
その右手でさっきからちゃりちゃり鳴らしてる巾着は酒代ではないのかな?
「ツケで買うてこい!どうせ何買うたかやなんて分からへんのや」
……ツケ?
「ツケってなんですか?」
立ち上がった隊士に、いきなり胸ぐらを掴かまれた。
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