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馬越さんが隊士の腕を掴んだ。
「佐伯さん、男の胸まさぐって楽しいですか?」
佐伯さんと呼ばれた隊士は腕を振り払って、お金の入った巾着を馬越さんに投げつけた。
「…………気のせいか。お前買ってこい」
すれ違いざまに睨みつけられたけれど、負けじと睨み返した。
「……その面じゃしようがない。俺も昔はよくありましたから……」
ちょっと開いた胸元を直す。
よかった……カッチカチに巻いてて。
「え?俺もよくあった?」
馬越さんは巾着をお手玉のようにほおり投げて、にやり笑った。
か、かわいい!
あんまり笑わないけど、本当に笑うとずるいくらいかわいいんだよね。
子供だったらぎゅってしたいよ
「何買おうかなぁ。酢でも入れてもらうかな」
「ええ?!そんなことしたら怒られますよ!」
「買って来いって言われたの佐伯さんでしょう?知ったこっちゃねぇ」
いつもの無表情に戻って、お手玉しながら歩いて行く。
「……でも………」
「福田さん、どれだけ人がいいのですか?」
八木邸の門をくぐって、馬越さんは足を止めた。
「あ。山南副長に呼ばれていたんだった……やっぱり佐伯さんに返してきます。救護室に先に行ってて下さい」
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