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救護室では、山南さんが一人で墨を摺っていた。
確か土方副長、沖田さん、井上さんも隊士募集メンバーだったのに…………?
「他の人達は用があって、ちらし作りは私が任されたんだよ」
山南さんは、さらさらと紙に筆を走らせる。
…………なんて書いてあるか全然分からない……
「こんな文句でいいかな?」
「……すみません。ひょろひょろ字読めないんです……」
ふむと、山南さんは頷いて、もう一度書き直した。
「これなら読めるかな?」
今度は楷書で書いてあった。
「隊士募集、要項一、武道ニ覚或ル者。二、攘夷ノ志有スル者……あと、何かな?」
山南さんはうーんと首をかしげた。
文字を読みながら一つ疑問が浮かんだ。
「……あの、私は武道に覚えがないですけど、どうして入隊できたんですか?」
山南さんはほっこり笑って
「腕っぷしの強いのだけでは、心許ないでしょう?隊には色んな役目がある。福田君は救護を。他にも会計方や、学のある者、色んな人が必要でしょう?」
「……でも、私は医者ではないので、お役にたてなくてすみません……」
「そんなことはないよ。福田君と馬越君はよくやってくれている。君達のことは、隊士達も心強いと思っているよ」
さっき、佐伯さんに穀潰しと言われて、少し落ち込んでいたけれど、その言葉に胸がじんわりした。
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