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ちらしを作る係りを山南さんにお願いして、私と馬越さんでちらし貼りに市中に出た。
「どこから行くんですか?」
馬越さんは
「とりあえずは知り合いの所を。お梅さんの店と、吉川先生。あと、公事宿でも回りましょうか?会津藩は遠いので近場から回わって行きましょう。道場は面倒臭いことになりそうだから、山南副長にもご同行願いたかったのですが……」
「面倒臭いこと?」
「……とりあえず、叔母の店から」
お梅さんの店につくと、胸から釘ととんかちを取り出して、断りもせずに店の壁に釘で打ち付けた。
「だめじゃないですか!?勝手に貼り紙したら!釘で打ったら壁に穴空くじゃないですか!!テープとか糊とかないんですか!?」
「……頼んでも断られるから……さっさとずらかりましょう」
小走りで逃げる馬越さんの後を追いかけていたら、ふと、店先にいる娘さんと目が合った。
「――あ!まささん」
まささんは、じーっとこっちを見て、思いきり笑顔になった。
「お雪ちゃーん!」
手を振り返えそうとして、今はお雪ではないことに気付いた!
止まりそうになった足を、全速力に変えて馬越さんの後を追った。
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