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「ひとつ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「うん? なに?」
私は声に振り返る。背景には自然豊かなキャンパス。緑の絨毯はふかふかで、木の上には小鳥が囀り、空は邪魔をする余計な電線はなく青く碧く澄んでいる。緑が綺麗に映えていてオレンジの校舎が鮮やかに彩られていた。
私がこの大学に入学した理由は3つある。一つがこの美しさ。もう、1年半も在籍しているのに思わずその絵に見とれていた。
「えーっと、あの、もしもーし……」
「あ、ごめんごめん。ちょっとボーっとしちゃってた」
「またですか、先輩……。癖になってません? ボーっとするの」
呆れてサークルの後輩は私を見た。
「んー……。そうだねー。私、結構悩み多き女の子だからねー」
「本当ですか? 先輩が悩んでるところ見たことないんですけど」
「ていっ」
「いたっ」
小さな後輩の頭にチョップをかました。
「もう! いきなりなにするんですか! 先輩!」
「余計なことを言った罰です」
と私はいつものセリフでその場をしめた。
「で、聞きたいことって?」
私は再び歩き出し聞き返す。
「いや……こういう話、先輩苦手なのかもしれないですけど。あの、先輩ってカレシいないんですか?」
「いないよ」
私は即答した。事実、私に彼氏はいなかった。
「結構、不思議なんですけど。先輩、可愛いですし」
すこし恥じらい気味に後輩が言う。その姿に私は思わず、頭を撫でた。
「ミーちゃんの方が可愛いよー! この女子力満点女の子め!」
撫でるというかこねくり回した。「ひゃっ」とか声出しちゃうのが可愛い。
「あー! もう、やめてくださいってば!」
「えへへ。ごめんごめんって。ミーちゃんあまりに可愛いんだもん」
「はあ、またそうやって誤魔化して……。でも、先輩がその……可愛いっていうのは本当ですよ? 少なくともうちの学科の男子が噂するレベルには」
「噂ってどんなの?」
「いや、ですから……『可愛い』ってことですよ」
またしても恥じらう後輩の紅潮した頬がぷっくりしていて更に可愛い。
「そっかー。意外とモテるんだねー、私。気づかなかった」
「……鈍感」
「ていっ」
「いたっ」
十八番の先輩チョップをくれてやった。
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