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『桜』
｢しｰちゃんよ､秋田市や角館では既に桜が咲いているそうだよ｡こっちは何時満開になるのかな…｣
虚ろな目で窓の外を見つめるｶﾎ｡時々このような症状に陥るが､そういう場合は大抵物事を深く考えている時である｡
私も一緒になって深く考えて答えを言うつもりはないため､今思ったことを素直に言おう｡
｢毎年のことじゃない､ｺﾞｰﾙﾃﾞﾝｳｨｰｸ近くでしょ｣
するとｶﾎは､窓を見つめたまま一呼吸置いてから答える｡
｢咲いたって､雨降って散るじゃない…｣
｢あっ…お気持ちお察しします｣
私達が住む地域は､桜が満開の時期によく雨が降って残念なことになる｡ｶﾎが今回虚ろな目で窓を見つめたのは､桜を哀れんだからなのだろう｡
今度からもう少し考えてから答えよう｡
ちっ､面倒臭い｡
｢ごめんしｰちゃん､何故か分からないけど聞こえてる！色んな意味でごめんなさい!!｣
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