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なるほど…
つまりここの住人の亭主がバカで、嫁さんは借金返さなきゃならないし、出来心でやった万引きを見られて会長さんとやらにいやらしい関係を強要されるはめに…こんなとこか。
なんだか、遥か昔のAVネタのようなベタさに呆れ気分が先行する
それに他人事に関与するのって、めんどくせえしなあ…
だけど、気の毒と言えば気の毒だわな。
仕方ねえなあ…
“ピンポーン”
「おいっ…静かにしてろ」
男が女性の口を手で塞ぎ小声で命令している。
(居留守かよ…ったく、こっちは忙しいってのに)
「すみませーん。先ほど電話で一時にお伺いするとお約束した田中です。あの~、すみませーん」
俺はわざと声を大きくして言ってやった。
「うるさいわねぇ!なんなの?」
隣の部屋からでっぷりと貫禄のある50代くらいのおばさんが迷惑顔で出てきた。
タンクトップにショートパンツ…明らかに似合わない。
「申し訳ありません。お隣様はお留守でしょうか?」
「そんなこと知らないわよ!」
「一時にお伺いすると約束してましたので…あ、もしかして暑さで倒れてるなんてことは…」
おばさんは途端に慌てて
「ちょっと、水野さん!大丈夫なの?水野さん!」
予想通り、激しく扉を叩き始めた。
(さあて、どうでる?)
「は……い。今…出ま…す」
中で女性の声がして、しばらくして扉が開いた。
ブラウスのボタンは留め、乱れた髪は一つにまとめられている。
「す…すみませ…疲れて横になって…つい…」
「なんだ、元気じゃないよ!まったく…さっさと出てきなさいよね!こっちは迷惑だわ」
「すみません…」
おばさんは『ふんっ』と鼻息荒く女性を睨むと自分の部屋に帰っていった。
「申し訳ありませんでした…」
「いえ…こちらこそ出すぎたことを…」
「え?」
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