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ゴムを纏いゆっくり体内へと進める俺を、ヒクつく中が締め付けてくる。
半狂乱になり声をあげる彼女を見下ろしながら、俺自身も頂上を目指す。
「あぁぁ~……っ」
ひときわ締め上げられ、俺は解放の道へと進んだ……
「ありがとう…」
彼女は泣きながら笑った。
「こちらこそ…素敵な夜をありがとうございます」
顔を手で覆い嗚咽を洩らす。
「貴女は素敵ですよ…これから負けないでくださいね」
「はい…今日はこれからの自分への…御褒美です。先取りですけどね…」
手で涙を拭いながら彼女は微笑む。
「最高の思い出です…」
「そう言ってもらえただけで、俺も満足です」
「もう少ししたら…出ましょうね…夢が覚めないうちに…」
後腐れなく、俺の望むスタイルではあるが、まだ楽しんでいたい気持ちもある。
「夢は…夢のままがいいです…だから、頑張れる」
彼女の強さを垣間見たような気がした。
ホテルを出てしばらく歩くと、彼女はソッと組んだ腕を離した。
「もうお会いすることはないと思いますが、最後にお名前を教えてください」
「いいですよ」
「私は水野春佳です」
「俺は田中奏多…」
彼女は一度だけ口のなかで俺の名を唱えた。
「さようなら…奏多さん」
「さようなら…」
カツカツと靴を鳴らし、堂々と歩く彼女の背中に別れを告げ、俺はくるりと踵を返した。
「ああ…早く理想の女性に会いたいな…」
空を見上げ星に『早く会わせてよ』と呟くと、俺は家へと帰っていった。
理想の女性を思い描きながら…
~おわりんご~
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