1.押しますか? 押しませんか?

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「ぶはっ、なにそれ、ダッサーい」 マルチェロくん、冴丸くんのうなじを見て、 思わず爆笑しました。 なんと、冴丸くんのうなじには、 バーコードのタトゥーが彫ってあったのです。 「うん、認めるよ。 君は人間じゃない。ラブドールだ」 「そない笑わんでも……。 え、それになんか、えらいあっさり信じるんすね」 「え? だってどこの人類がそんなダッサいもの彫ったりするの? しないよね? 人類は。 そんなダッサイの」 「……あはは」 冴丸くん、もう笑うしかできません。 「うん! というわけで、 僕は今からローザにクーリングオフの手続きをお願いすることにするよ」 そう言うや否や、 マルチェロくんは立ち上がり、 風の如く電話機の方へ。 「いーやいやいや、あかんあかんって! 」 冴丸くんは、 そうはさせまいと、 マルチェロくんの前に立ちはだかります。 「DO・KE」 「イヤっす! マスターが俺の地区Bを押した瞬間から、 俺はもぅマスターしか愛せないんっす! なのに、それやのにピンポンダッシュなんて、卑劣っす! 」 「はぁぁ? そんなの僕の知ったこっちゃないね! もー、寄るな! ホモドールは原子に還れ! 」 マルチェロくんは、 わいわい騒ぎ立てる冴丸くんの爪先を踏ん付けると、 さっさと受話器を取るのでした。 ピッポッパッペ。 「あぁ、……俺、 このままやと工場帰ってもスクラップに……」 しかし、そんな冴丸くんの嘆きなんてお構いなしに、 マルチェロくんは番号を押すのでした。 こうなれば冴丸くん、 最終手段です。
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