『手を出したら殺しますよ』

59/59
660人が本棚に入れています
本棚に追加
/646ページ
「恋とは、一瞬の勘違いと引きずる熱、犠牲の上にあるもの。また愛とは、続く幸せとあたたかさ、悲しみと苦しみを永遠に受け入れる覚悟の結晶……」 突然囁かれた言葉。 双子は、それを発した紡に首を傾げて。 「それは……なんですか?」 「藤本さんの言葉です」 紡は微笑みを苦笑に変え、 「彼の言葉は深くて中々に興味深い。私もそれなりに生きていますが、全部を理解するにはまだまだの様です……」 指先でこめかみを弾く。 「いずれこんな言葉を理解する日も来るんでしょうね。……此処に居れば」 紡の言葉に、セツナとナユタは顔を見合わせた。 好奇心に満ち溢れた少年と少女が、オッドアイを煌めかせる。 「私も何かを知ることが出来る?」 「ボク、知りたい事たくさんあります!」 二人は紡に答えを求めた。 小さな店主たちの問いに、紡は頷き「ええ、きっと」と返し。 「ですから、それまではキチンと仕事をこなし、“それなり”にしていなくては駄目ですよ? 二人とも」 紅茶のカップが、かちり、と音を立てた。 細い紡の指先がカップを絡め取る。 「はい! ご主人様(マスター)!」 双子の元気な返事に、紡は瞳を細め微笑んだ。  
/646ページ

最初のコメントを投稿しよう!