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そこからはさほど険阻な所もなく、葛の根に取り付き、苔の上を爪先立ちしながら約二刻ほどで目的地へとたどり着いた。
笠置城である。
「小見山殿、何故笑う?」
「感心しておるのよ」
「何がだ?」
「そなたは真の曉将よ、源九郎義経並みのな!」
源義経とは誰もが知る源平合戦における英雄である。
古き名将と己を比較されて陶山義高は少し照れた。
小見山行忠は続ける。
「義経は一の谷において、崖を馬で駆け下り、敵陣へ奇襲を掛けるという前代未聞の事をやってのけた」
「そなたはこの風雨の中、崖をよじ登り敵本陣へ奇襲を掛けようとしている、これもまた前代未聞」
「まだ奇襲しておらんぞ」
「はっは、このまま帰るつもりか?」
二人は顔を見合わせニヤリと笑みを浮かべた。
「行くぞ」
陶山家、小見山家の手勢五十騎は柵を乗り越えて城内へ侵入した。
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