0人が本棚に入れています
本棚に追加
おい、そこの君、まさか、どっかの我が儘(わがまま)女が部長をやっている部活だと思ったか?そう発想したのならば、残念だと言ってやろう。この部活の部長は、この俺、ジョンである。部活の内容は、夏休みまでは世界の不思議を研究することをメインにしていたが、今は違う。
俺達は、一つの目的に為に活動していた。
「春日さんは今日も欠席ですか?」
部室に入るなり、副部長の小泉宗一郎が白々しく聞いてきた。
「何を今更、お前の情報網をもってすれば、すぐに分かるだろう」
「一応、聞いてみただけです」
いつもポーカーフェイスで表情を崩さない宗一郎は正直なところ、何を考えているのか分からない。それでも、いざという時は頼りになる仲間であることは変わりなかった。
「あ、ジョン君。丁度、お茶が沸いたよ」
ゴスロリのメイド服を着ている彼女は、夜雛胡桃(よるびな くるみ)。この部活のマスコットキャラを演じてくれている。変に演技されるとかえって気を遣ってしまうのだが、すぐにそれは解消された。
「ちょっと!胡桃!あんたのところの族、また交通違反したじゃないの!」
俺のあとから部室にやってきたのは、眼鏡が印象的な活発的な女子だ。名前は鳴門雪那(なると せつな)。雪那は部室に入るなり、お茶汲みをしていた胡桃ちゃんに詰め寄る。俺の姿など、まるで眼中に入っていないようだ。
「これ見なさい!昨日の深夜十一時頃!高速での速度違反!」
雪那が胡桃ちゃんに突きつけたのは、警視庁の印が押された違反切符。それを突きつけられた胡桃ちゃんは声を荒げて言い返した。今の愛らしい印象を変える口調だ。こっちの方が俺達にとって聞き慣れた声であるのだが。
「うるせーよ。人っ子一人、走っていねー高速道路でのことだろうが!誰にも迷惑かけてねーんだから騒ぐんじゃねーよ」
「そう言う、問題じゃないわ!違反は違反よ!」
胡桃ちゃんと雪那の言い争いは、この部活の名物になりつつあった。
最初のコメントを投稿しよう!