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ここで、もう少し詳しく、この二人について説明しよう。胡桃ちゃんは普段でこそ、愛らしい姿をしているが、本来の姿ではない。夜こそが彼女にとっての本番なのだ。イヤらしい意味ではないからな。胡桃ちゃんは地元でも有名な『未雷陣(みらいじん)』という暴走族の総長をしている。昼間、部活での黒いゴスロリメイド服とは違い、真っ白な特攻服を着た胡桃ちゃんには別の魅力がある。
そして、それに文句をつけているのが、少々ややこしい話になるが、鳴門警視総監殿のご令嬢であらせられる、雪那だ。初めて、部活に入部した時よりは、いくらか丸くなったが、今でも時折、警察関係者という立場上、胡桃ちゃんと反発することがある。
それを、俺と宗一郎は暖かく遠巻きに見守っていた。少しばかり言い争いが続くが、落ち着くことが分かっていたから。
と、ここまでが、今の俺達の日常だ。いや、日常というのは間違いかもしれない。そもそも、一が思い描くような日常など、ハナから存在していない。だからこそ、今のような日常とは、容易に壊される。
場所を二組の折りたたみテーブルに移し、それを挟んで言い争っていた胡桃ちゃんと雪那。そんな二人の間に、信じられるか?人が降ってきた。この四方を壁と窓とドアで囲まれた空間にだ。当然、天井が開いているなどといった突拍子もないことは起きてなどいない。それなのに、二人の人間が降ってきた。二人が落ちた衝撃で備品であるテーブルは壊れた。
「いててて・・・」
真っ先に声を上げたのはジャケットを着た金髪の男だ。彼は落ちた時の衝撃を痛がっていたのか、それとも服の裂け目から見える痛々しい傷を痛がっているのか分からない。そもそも、何をどうすれば、そんな怪我を負うことになるのか。
「何が起こったんだ?」
もう一人は、真っ黒な制帽に制服、チェック柄のネクタイを締めた俺達とそう歳が変わらない青年だ。彼も金髪の男ほどではないが怪我をしているようだ。
まず、落ち着いて状況を整理しよう。今の今まで、日常はそこにあった。そうに放り込まれるようにして現れた、この二人は何者なんだ。宗一郎、お前の差し金か?
困惑気味に宗一郎に視線を送るも、首を横に振られた。どうやら、宗一郎も知らない人達のようだ。
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