第1章

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田中は互角だと思っていた。  少なくとも自分に向かってくる相手がいたことを  喜んでいた。  なのに・・・  なのに・・・  「お・・・お前は・・・俺を馬鹿にしているのかっ!?」  「ああ」  「・・・お・・・おおおおおおおおお!!!!!!」  田中は走り出しハンマーを振り下ろす。  止まる。  田中は泣く。  「俺の・・・俺の心は・・・こんっなにも・・・   軽かったのか!!!」  田中は絶望した。  田中は小さい頃、エレベーターに  閉じ込められたことがあった。  その日は母の誕生日だった、学校から帰ってマンション  のエレベーターに乗ると、ゴウンッという音とともに  エレベーターが止まり閉じ込められた。  田中と一緒に乗っている会社員はいいひとだった。  田中に必死に「大丈夫だよ」「すぐに助けがくる」など  言いかけた。  しかし会社員は苦しそうにもがき始める。  最後は「ごめん」と一言言って倒れた。  田中は子供なりに理解し彼を助けたいと願った。  心からの願いだった。  「カラスミ」はそれを叶え、
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