友よあなたは強かった(1)

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 3人を茶の間に通すと、さっそくお母さんが箱に入った湯の花まんじゅうと麦茶を運んでくる。おじいちゃんは通院のため不在で、用意されたグラスは4人分だった。それから瑞希さんが手持ちの紙袋から菓子折を取り出す。まあ定番ですが。そう言って彼女が差し出したのは東京ばな奈と浅草の人形焼きだ。まあご丁寧にどうも。あっ、みなさん足くずして。お母さんが言うと、座布団にきちんと正座していた3人はそれに従う。杉本くんはあぐらをかき、瑞希さんは体育座り、エリナはお尻を床に着き脚をMの字に曲げるいわゆる女の子座りをする。お前よくそんなことできるな。杉本くんはエリナの座り方を真似ると、すぐさま苦痛に顔を歪めた。  さて、ここでわたしはこの家にいるもう1人をどうするか考える。さっきエリナに言ったとおり、いまの彼は爆弾のように刺激しがたい存在だ。けれどそのうち3人と顔を合わせることが避けられない以上、放っておくのは得策ではない。とりあえず挨拶だけでも……。悩んだ末、わたしは重い腰を上げ2階へ足を向ける。 「ケータ、入るよ」  ノックしてから佳太の部屋の戸を開けた。思ったとおりというか、彼は扇風機の風に当たりながらベッドに寝そべり、マンガを読んでいる。 「みんな来たから。一緒にお茶しない?」 「……」 「クーラー入れてあるからさ。なにもこんな暑いとこで……」 「いいよ」一瞥もくれず彼は固辞する。「これから勉強すっから」  勉強? どの口が言ってんの? このひねくれ者っ。罵りたい気持ちを抑え、わたしは言った。「……うるさくしてごめんね」  茶の間に戻ると、お母さんを加えた5人でお茶にした。なにもないところで退屈でしょうけど。お母さんが言うと、クーラーさえあれば充分っすとだらけきった様子で杉本くんが返す。姉ちゃんうちにもエアコン入れてよぅ。いかにも切実そうな彼の要請を、しかし瑞希さんは「だめっ」とにべもなく却下する。あんたのせいでエンゲル係数高いんだから。だったらせめてテレビ……。あーあれもう映んないんだっけ。つーかなんでうちだけあんな生活水準低いの? 『ALLWAYS』の時代と一緒じゃん! なによあたしの稼ぎにイチャモンつける気? だったらバイトしなさいよバイト。どーせヒマなんだから。
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