友よあなたは強かった(1)

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 河田くんとのその後をお母さんに打ち明けたのは6月末のことだった。ある程度気持ちの整理は着いたし、やはり家庭でも隠しておけないと思ったのだ。やっぱりうまくいかないもんね。向こう見ずな若い恋だからということだろうか、お母さんは夕食後の洗い物を淡々と進めながらどこかこうなることを予測していたみたいにそう言った。ま、すぐ見つかるわよ。あんたのよさわかってくれる子が。わたしはそういう人をすでに1人振ってしまったことは口にせず、そうだねと応じた。  さて、7月上旬にはまたもテストという難所が立ちはだかる。梅高は二期制のため中間という位置づけだ。すでに河田くんというブレーンを失っていたわたしは新たな人材を必要とした。幸い、(奥沢ガールズ改め)ランチガールズは比較的まじめで遊びより勉強への関心が高い。かつ得手不得手もそれぞれ異なり、ギブアンドテイクの公平な関係を結ぶ意味でも彼女らは理想的な仲間といえた。わたしはノノちゃんやジュリちゃんに声をかけしばしば放課後の教室で机を向け合った。あんたらよくやるねぇとはじめは冷笑ぎみに見ていたエリナも、そのうちこの輪に転がり込んできた。あいつら頼りなんないからさ~。彼女は普段つるんでいる友達をテスト前に限り見限ったのである。杉本、あんたも入れてやっていいよ~。自宅学習じゃさびしいでしょ?  が、新たにお呼びのかかった彼は言下に拒否した。誘い方に問題があったからではない。女子の中に男子が1人では集中できないと言うのである。もっとも、放課後とはいえ人目に触れる教室でガリガリ勉強するのはみっともないという気持ちもあるのかもしれない。  しかしながら、テスト本番を目前に控えすべての部活動が休止されると状況は一変した。ソフトテニス部のナカちゃんはもちろんのこと、各教科でわからない箇所があったりモチベーションが上がらないという人たちが男女問わず参入してきたのである。というか、わたしたちの、とくにエリナの勉強している姿が多くのクラスメイトのあせりを招いたのだ。その参加人数は最終的にはクラスの半数近くに上り、たまたま教室にやってきた白石先生は「こんなクラスははじめてだ」と目を見張った。
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