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こうしてテストを乗り越えるとようやく夏休みを迎える。ただし、さすが都心の進学校とありじつにその半分は夏期講習に充てられる。受講は一応強制ではないものの、せっかく半年分の定期を持っているのだからとわたしは当面足繁く学校へ通うことを選んだ。というか、少なくとも1教科は選択しないとよほどの成績優秀者でもない限り実際は指導の対象となってしまうのだ。なに、わたしが選択した数学と英語は2時間目以降のため、極端な早起きをする必要もなければ都心でラッシュのピークに当たることもない。平時の通学に比べればまだ楽なのである。それに、通学時間の長さや混雑などを別にすれば、制服を着て学校に通うことが案外嫌ではない。節電の時季とあって夏服は当然クールビズが奨励されたが、第一ボタンを開けたワイシャツにわたしはネクタイを緩く締めるスタイルにこだわった。
ところで、不運とは思いたくないが英語のクラスは例の2人と一緒になってしまった。河田くんと柿崎さんはつねに前後か左右に席を並べ、教室ではその区画だけ独立した世界が形成されているようだった。もちろんわたしにはそう見えてしまうだけのことであって、なにも2人が授業中にいちゃついているわけではない。2人の授業態度はむしろよく、たとえ河田くんがあくびや伸びをしても柿崎さんがしっかり前を向かせるような感じだ。ときおり小声で言葉を交わすことはあっても、きっと授業の内容についてだろう。ともに勉強もがんばる健全な関係。ごく客観的に見た印象はそれ以上でも以下でもない。
実際のところどうなんだろう、とわたしは思う。要は、カップルとしてどのくらい進展しているのかと。
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