一滴の、最大の愛を。

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 胸もない。頭だってそんなに良くない。顔さえよければそれでもちやほやされるかもしれない。それだってない。ストレートに言うなら、「ブス」という部類だ。  目ももっと大きければいいのに。鼻筋がもっと通っていればいいのに。腰だってもっとくびれてて、胸もお尻ももっとセクシーな曲線を描いていればよかったのに。私はコンプレックスの塊だ。  そんな私にも可愛い部分が一つだけある。名前だ。私の見てくれとは対照的に、花園照(はなぞのてらす)という名前だけが異彩を放ち、とても綺麗な、可愛らしい雰囲気を醸し出している。でもその名前すら、私のブスを煽り立てるような所で見られたりもしてきた。  アルバイトや会社の面接でも、「可愛い名前だね」と誉められることが幾度となくあった。しかしそこまでだ。可愛いのは名前だけで、大抵の人はその後に私の顔を見て苦笑したり、中には笑いを堪えるのに必死な人もいた。その度に、私はずっと耐え忍んできた。
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