一滴の、最大の愛を。

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 そんな不細工日本代表のような私にも、好きな人はいる。もうずっと好きでいる、たった一人の男性がいる。名前は篠原仁(しのはらひとし)。ソロで歌唱活動をしている、所謂アイドルだ。初めて見た時は確か小学3年生の時。私の5つ上の歳の彼が、テレビの中で爽やかに茶髪を流し、屈託のない笑顔で歌を歌う姿に、私は釘付けになってしまった。  アイドルなんてのは、みんな笑顔を振りまいて活動するのが普通だ。でも私は、彼の笑顔の中から「楽しさ」を感じたのだ。  この人は、なんて楽しそうに歌を歌うんだろう。  この人は、なんでこんなに歌が好きなんだろう。  この人は、なんで私の前に現れて来たのだろう。  私は一瞬で虜になっていた。以来、今日現在に至るまで。私は今年で27歳になるから、もう20年弱になるのだろうか。子供の頃から必死にお小遣いを溜め、出来る限り彼のライブにいった。握手会にも、頻繁に足を運んだ。  そして一度もすっぽかした事のないのが、毎年2月に行われるバレンタインデーイベントだ。もちろん、チョコも持っていく。手作りだ。真心こめて、丁寧に作る。
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