みんな、バナナの皮に気を付けろ

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とりあえず朝食を摂るためにキッチンに立つ。ちなみに俺は一人暮らしをしている。四畳半の居間と簡素なキッチン、トイレはあるが風呂がない、築50年のボロアパートに住んでいる。 居間には、趣味である読書のための本が並んだ本棚と、こじんまりとした黒いテーブルが隅に置かれている。 そしてあとは布団だけという、いかにも貧乏な一人暮らしの部屋だ。 「金がないのもそうだけど、物がいらないもんなぁ……あぐっ」 昨日買った食パン(一斤80円)の1切れに、目玉焼きやらベーコンやら野菜たちを乗っけて、その上にもう1切れパンを乗せてかぶり付く。 安物なのにかなり瑞々しい野菜にちょっとした感動を覚えた。 「うむ、美味であった。……何キャラだよ?」 寝起きのテンションは自分でもよくわからん。 俺は食事を終えたあと、パジャマから外行きの服に着替える。 今日は12月6日。当然寒い。長袖のシャツにジーパン。ウールのフワフワしたジャケットを着て、最後に赤と黒のネックウォーマーを装着。 完全装備だ。 「予報だと…確か曇るって言ってたな。雨は降らないみたいだから、傘はいっかな…」 俺は着々と出掛ける準備を進めた。 そう、この日はとある用事があって外出する予定だったんだ。しかもけっこう重要な用事。 12月6日という、好きな数が2つ並んだこの日は“誰よりも不幸な人類”を自称するこの俺にも、何か良いことがあると信じていたからこそ大事な予定を入れていた。 「よっし、準備オッケー…じゃなかった」 財布と携帯をバッグに入れて背負い、『さあ出掛けるぞ!』と意気込んだはいいけど、1つ大きなことを忘れていた。 「…寝ぐせ、治してなかった…」 春頃から切るのが面倒になって(ていうか切りに行く時間すらない)放置してた髪を触る。 なんかよくわかんないけどサラサラな黒髪が掌を滑った。伸び放題にしていたから、今じゃあ背中まで届いている。 寝ぐせの付き方もかなりのもんで、鏡を見るとハリケーンを突破した後みたいになっていた。
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