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「またお話しましょうね」
笑顔で手を振る英里と由里に頭を下げて部屋を出てから、大きな息を吐き出した。
10分程のあいだ、初めて面と向かって話す彼氏の母親と叔母、もとい副社長と専務。
あまりにも難易度が高い話相手に緊張疲れが大きかった。
「本当は主人も会いたがっていたんだけど、あいにく出張で」
との英里の言葉にはガクッと膝から崩れ落ちそうになった。
出張で助かったと、社長室に向かって拝んでしまいたくなったほど。
実際に話をしてみてとても雰囲気の良い人達だとは思うけど、できれば鴻と一緒に呼び出してほしい、と。
それにしても手紙とは…。
差出人の予測はついている。
呼び出されることが分かっていたかのような口ぶりで声をかけてきた高橋。
手紙のことを訊いたところで正直に話してくれるとは到底思えないし、こういう時こそあえて反応しない方がきっといい。
反応するとそれこそ相手の思うつぼ。
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